BRAND STORY

私のそれは〝紅茶〟だった。

2026.03.31
私のそれは〝紅茶〟だった。

みなさま、いつもありがとうございます。新ブランド「ONDE(オンド)」をリリースしました。イタリア語で「波」という意味、そして日本語の「温度」の響きです。「雲透」とともに、この紅茶の物語が派生して広がっていくのを、一緒に笑ったり泣いたりしながら、見守ってもらえたら嬉しいです。

【ONDE concept】

15歳になる年の誕生日に母が言った「〝愛される人〟になんてならなくていいから、〝愛せる人〟になってほしい」と。こんなにも堂々と「愛されなくていい」と言い放つなんて、子どもながらに変わった親だなと思った。

「愛されようとすることは悪いことではないけれど、相手に気に入られたくて顔色をうかがったり、自分の気持ちを押し殺したり、そういう生き方をしてほしくないの。愛する方が強さが必要だと思わない?だって、自分の想いが受け入れてもらえるかという不安とか傷つくんじゃないかという恐れとか、そういうのも引っくるめて、自分が自分で「愛する」と決めることだから。覚悟がいるのよ。愛されるかどうかは、相手次第。でも、愛するかどうかは、自分に主導権があるの。だから、愛されるよりも先に、愛せる人になってほしいの。愛せるようになれば、自然と愛されるんじゃないかしら。それに大丈夫、たとえ世界中の人が貴女を嫌って疎ましく思っても、お母さんだけは、最後の最後まで貴女を愛しているから、安心して生きてほしい。」と、母は続けた。

それ以来、私は〝愛される努力〟よりも、〝愛する勇気〟を持つことを意識するようになった。それでも、時々、寂しくて、愛されたい気持ちがむくりと顔を出すと、つい賑やかな輪の中に足が向いたり、そこに居場所が欲しくて、媚び諂ってしまったり、グッと言葉を飲み込む場面も当然あった。耳障りのいいことだけを言ってくれる人と生温い時間を共にした方がずっと楽だと無意識に思っていた時期もあったかもしれない。でも、やっぱり、自分の気持ちに蓋をして、不都合なことや小さな違和感を見て見ぬふりをして、我慢をしなければならない関係や事柄は、そんなに長く続かなかった。

誰かを、何かを、手放しに愛することは、時々、強い痛みを伴った。その痛みは鋭く激しいものもあれば、鈍く重たいものもあった。そして、痛みを抱えながら、愛する自分はとても滑稽で格好悪かった。だから、強さと覚悟が必要なのかと年を重ねるにつれ、母の言葉の意味がやっとわかり始めてきたけれど、わかったところで、実際に、〝愛すること〟を貫くのは、本当に難しかった。
 
それでも、私は〝愛すること〟を諦めないと心に決めた。愛するということは、そのものに、その人に、関心を向けることから始まる。私は、なんでもすぐに知りたがり、調べたがり、質問魔に育ち、好奇心旺盛なまま、大人になった。
 
誰もが好きなものや興味関心があるものがあるだろう、別になくったって構わない、それがなくても死にはしないから。でも、たまたま私はそれに出逢った。私のそれは〝紅茶〟だった。私は紅茶に熱中したし、熱狂した。

紅茶のおいしい成分とされるタンニンは、80度以上の湯温でゆっくり溶け出すという性質を持っていて、緑茶のおいしい抽出温度は80度以下、玉露とか高級なものになればなるほど、温度は下がる。コーヒーの場合は、抽出器具や豆の炒り度合いによっても異なるが、92〜95度くらい。だけど、紅茶は限りなく100度に近く沸騰したての熱湯が最適解。

とにかく火傷しそうなほど熱くなくては、おいしい成分が出てくれないのだ。「だから、紅茶を届ける人間も熱い方がいい」といつも自分に言い聞かせる。(いや、本当はもっとクールに立ち回れたらいいのになと思う日もよくあるけれど、できないから・・・格好悪い自分への言い訳だった。笑)それに、タンニンは渋味成分、甘さでもなく、旨味でもなく、渋味をおいしいと捉えるなんて、なんだか粋でカッコいい。それこそ、渋いな・・・と思うのだ。

甘いだけでも、うまいだけもなくて、〝渋い〟もある方がいいなんて、まるで人生を語るみたいだとカップを見つめる。楽しいこと、嬉しいこと、喜ばしいことだけでなく、悲しいこと、苦しいこと、失敗や後悔のようなものがあってこそ、人生は面白くて、おいしいのだ。

他の誰かも、私のように何かに熱中したり、熱狂したり、もしくは〝愛する勇気〟に二の足を踏んでいたり、あまりの熱に火傷を負ったり、逆に燃え尽きるほど、愛し抜いて、いい感じに力が抜けて、細く長く愛せる方法を知ったり・・・そうやって、何かを、誰かを〝愛して〟日々を過ごしているのだろうか。
 
誰かの愛する何かを覗いてみたいし、知ってみたい、好奇心の強い私は、いろんな人の〝夢中〟や〝物語〟に興味があるし、私の〝愛している〟ものとも出逢ってくれて、紅茶を知ってくれたら、嬉しい。その人の生活に〝ティータイム〟が、その人の人生に〝紅茶〟という選択肢が、私にとっての物語が加わると、すごく嬉しい。
 
あなたは何を愛していますか?あなたの愛する〝それ〟を横に置いて、あなたの愛する〝その人〟を思い浮かべて、この紅茶を飲んでほしい。そう思って、ひとつずつ作りました。