焼き菓子を愛する人のための紅茶
ONDE — BAKED SWEETS

焼き菓子を愛する人のための紅茶

お菓子が、もっとしゃべりだす

「お気に入りを並べて」

STORY

「今日をワタシ的『紅茶記念日』に制定したい!!」そう叫んだのは、つい1ヶ月前のことだった。日本紅茶協会が定める『紅茶の日』は11月1日なのだが、私は特に協会にも属していないし、同業種の友人もほとんどいないので、ひっそりと勝手に、自分だけの紅茶記念日を作っても誰にも叱られないだろう。私はずっと自問自答していた。しかも長い年月・・・「どうして紅茶だったんだろう?」「日本茶でも中国茶でも、抹茶でもコーヒーでもなくて、なぜ紅茶だったんだろう?」そこには確かに理由が存在しているはずで、紅茶を好きになったきっかけはもちろん覚えている。ずっと好きで居続けられた、どんどん好きが増していった要因もなんとなくわかっているのだが、「他の何かではなく、紅茶じゃなきゃダメだった、紅茶にしかない、紅茶だけの魅力」を長い間、私は上手く言葉で説明できなくて、その問いに向き合うとなんだかモヤモヤしてしまい、「好きだから。好きに理由なんていらないでしょう」と誤魔化してきた。紅茶を一生の仕事にすると決めたのに・・・言語化できないなんて、自分でも不思議でしかたなかったし、悔しかった。


だが先日、忘れもしない2025年9月3日、私はついに、その答えに辿り着いたのだ!!私はティーセミナーの講師を頼まれる機会もよくあるが、自分自身も生徒として紅茶教室に通っている。10年以上前、最高位のゴールドティーマイスターの試験に合格するためにマンツーマンで指導していただいた照屋先生のところに、今も通っている。人からは時々「まだ勉強するんですか?」と驚かれることもあるのだが、資格試験をパスするための勉強はもう必要ないけれど、純粋にまだまだ紅茶は奥が深いし、新しく学んだ知識が商品作りやセミナーでお客様に喜ばれたり、生産者さんの役立つかと思うと嬉しいし、楽しくて仕方ない。私は運良く、私以上に無邪気に紅茶を追求し続けている恩師にも恵まれた。先日、先生と2人でカリキュラムを終えた後、私は質問した。「先生、どうして紅茶だったんですか?先生はお料理もお菓子も教えられるし、テーブルコーディネートのレッスンもされていて、茶道も習われていたし、中国茶にいたっては、漢詩まで学んで現地に通って茶師の資格までお持ちなのに、どうして紅茶なんですか?コーヒーでも抹茶でもなくて、紅茶だった理由を教えてください」と。


先生は少し考えて「う〜ん、どうしてかしら・・・そうね、「紅茶」はトーキングツールだからかな?「お菓子」と「お喋り」と3つセットでしょう?お菓子をつまみながら、紅茶を飲んで、おしゃべりする、古くからそうやってコミュニケーションを円滑にして人間関係を作ってくれるでしょう?例えば、茶道は少し格式が高くて、静かに厳かにお手前を進めていくから、お菓子を食べるタイミングもお抹茶を飲む手順も決まっているけれど、コーヒーはハンドドリップにカフェラテに気軽にいろんな飲み方ができて自由度が高いよね?紅茶は、アフターヌーンティーのように格式高い場面にも登場するけど、ティーパーティーでおしゃべり厳禁なんて考えられないし・・・お家や職場ではマグカップでカジュアルに楽しむこともできるでしょう?お菓子だけでなく、食事と合わせて食中茶としても楽しめるし、この許容範囲の広さこそが、紅茶の最大の魅力じゃないかしら。」と答えてくださった。


「先生!それだーーーー!!それです!!!間違いないです!!!だから、紅茶は世界でお水の次に飲まれる飲み物になったんですよね?!きっと!!やったーーー!!!」と大興奮!!!「先生!!!長年、私が説明できなかった紅茶の魅力を言語化してくださって、本当にありがとうございます!!!!めっちゃスッキリーーー!!最高の気分です!!!」と大騒ぎ。しまいには「もう迷いがなくなりました!!無双した気分です!!無敵感がハンパないです!!今日を〝遠藤的〟紅茶記念日に制定して、私、今日から紅茶道の始祖になりますね!!笑」と勝手に宣言。先生はニコニコ嬉しそうに「それはよかったわぁ。紅茶って、パンドラの箱みたいだと思わない?〝紅茶〟という箱の蓋を開けると、茶樹の品種とか、味わいや香りのことだけでなくて、そこには陶磁器やお菓子があって、西洋史や中国史、世界中の食文化や歴史があって・・・」と語ってくれる。「テーブルの上には、世界が広がっている・・・ですよね?!」と遠藤もテンション高く答える。


「おい!いつになったら焼き菓子の話するんだよ?」と思っていたそこのあなた・・・今からです!!ここからです!!やっとスタート地点です!!(笑)私はずっと悩んでいました・・・数年前に作った「焼き菓子のために」というサブタイトルがついた「For Cookie」というブレンドをONDEの中で「焼き菓子を愛する人のための紅茶」としてリニューアルすることが決まっていたのですが、ご協力くださったSUNDAY BAKE SHOPのかづこさんから届いたのが、まさに「パンドラの箱」でした。箱を開けるとキャロットケーキやビクトリアスポンジ、ビーガンビスケットにショートブレッド、どれもおいしくて斬新なのに懐かしいような、スパイシーさも甘さにもしっかりでパンチがあるのに、なぜかやさしいような・・・今までに食べたことがない個性的な焼き菓子達に、もう私は完全に混乱して頭を抱えていたのです。


先に言わせて欲しい。声を大にして言わせて欲しいです。今まで作った紅茶のブレンドの中で、これが一番、難しかった・・・「パンを愛する人のための紅茶」を作った時も「チョコ」の時も「ワイン」の時もどれも種類がものすごく多くて絞りきれなくて、それぞれに苦労しましたが、今回は比にならなかったです。「焼き菓子」とひとことで言ってもクッキーやマドレーヌ、パウンドケーキ、ラスクにスコーン、カラフルなマカロンも焼き菓子だし、お煎餅も焼き菓子に分類される。定義がシンプルなだけにまたしても種類が膨大で、どれにでも合わせられる包容力が必要だと頭ではわかっているけれど、「焼き菓子を愛する人のための紅茶」を謳う以上、無難なものにはしたくない気持ちと葛藤していたところに、かづこさんからこの魅惑のパンドラの箱が届いてしまったわけです。最初は、微調整してパッケージリニューアルするイメージでいましたが、完全にゼロからのスタート、いや、むしろ迷子になってしまい、手探りで道を探していたところだったんです。


迷える子羊になりかけていた遠藤でしたが、先生と改めて「紅茶の魅力」を確認し合い、まるで天啓を得たかのようにブレない精神を取り戻したわけです。そう!!紅茶の魅力は、その許容範囲、守備範囲の広さなんです!!!どこの国から、どんな個性的な焼き菓子が来ようとも、受け止められる「THE・TEA」をブレンドしてやろうじゃないか!!!燃えました・・・そして、ついに完成したのが、この「焼き菓子を愛する人のための紅茶」です。毎回言ってると思われるかもしませんが、今回も本当に自信あります!!!むしろ自信がなきゃ、商品化しちゃダメでしょう!!!と、いつも思っています。


ベースになっている茶葉は、ネパール・ミストバレーの最高級セカンドフラッシュ、この茶葉は「バターを愛する人のための紅茶」にも使っているのですが、お菓子やケーキと合わせるのには、やはりセカンドフラッシュ特有のしっかりとした芯のある渋味がボディの基盤に欲しくて、ここは譲れませんでした。私たち、ティーマイスターはこれを「美しい渋味」と呼んでいて、紅茶は渋味を楽しむ飲み物なので、バターや砂糖、ナッツやスパイスを使う様々な焼き菓子は、この味、香りともに最も充実するこの夏摘みの「美しい渋味」とともに味わってもらいたいんです。そして、少し甘さを出したいけれど、強すぎるとお菓子の甘さを邪魔してしまうので、「めいりょく」という和紅茶をブレンドしました。「めいりょく」は、もともと日本茶品種で緑茶にすると爽やかでやや薄い印象を受けるとされていますが、紅茶にすると軽やかで上品な甘さの中にスパイスやカカオ、柑橘のフルーティーさなどの複雑な香りがとれ、旨味や甘味のバランスも非常にいい茶葉です。さらに、穀物のような風味もとれるので、実は、「パンを愛する人のための紅茶」に使っているんです。私は他の産地や違う品種の和紅茶もブレンドした数種類のサンプルを作ったのですが、その中から、かづこさんが「バター」と「パン」の両方の要素を含んだこのブレンドを選ばれた時は、「さすがはベイカー」と唸りました。それと同時に、私が意図して感じて欲しかった味わいをわかってもらえた気がして、本当に嬉しかったです!!日本中、いや、世界中の数え切れないほど豊富な種類の焼き菓子たちを両手を広げて迎えられるような包容力あるブレンドに仕上がりました。

あまりの産みの苦しみに・・・言葉遣いがところどころ、言い切りになったり、ですます調に変わったりで、読みにくいかと思いますが、私のこの情緒のアップダウンも一緒にお楽しみください!!笑 大変だったよぅ・・・(涙)でも、おかげさまですごくおいしいブレンドになりました。

焼き菓子を作る人、包む人、届ける人、食べる人、焼き菓子とティータイムを愛する全ての人に、愛と感謝を込めて・・・

READING TEA

この物語は、読んだ時点では完成しません。あなたの状態、気分、経験によって毎回意味が変わる——未完成のまま渡されるストーリーです。

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